「標準搭載」の怖さあるよね…
Japan Color 2001 CoatedがPhotoshopカラー設定の初期設定になったのが、CS2(それまではJapan Standard v2でした)
カラー設定を触らないまま「イメージ」メニュー>「モード」>「CMYK」で変換すると、デフォルトプリセットの内容の違いにより色の差がでちゃってたわけです。CS2が2005年ですから…あ、結構待ちましたね。
それでも「日本のオフセット印刷の標準・基準」としてのJapan Color 2001 Coatedの普及には、Adobeアプリの初期設定になったのが凄く効いていたことは間違いなく、業界全体でJP2001をターゲットに調整していく流れが確かにできていった功績は素晴らしいものがあります。仮に、Photoshopデフォルトでなかったらどうなっていたか。ちょっと想像したくもありません。
ただもう時代はどんどん過ぎるわけですよ。オフセット印刷の標準がCTPになっていても、フィルム出力&PS版焼き付けで版を作って印刷していたかなりかなり古い時代の規格が、16年も使い続けられているのはちょっと異常であろうと思います。
本格的普及の一歩目となるか?
今回のバージョン(Photoshop CC 2015.5)ではJapan Color 2011 Coatedが、特にインストールしていなくてもカラー設定から選べるようになりました。
また新しく追加されたプリセット「一般用 – 日本3」を選ぶとCMYKプロファイルには2011がセットされます(ただし初期設定では一般用 – 日本2のjp2001がデフォルト)
「一般用」? なぜだ…なぜWEBや印刷系プリセットを追加しない…
まぁ、「DLしてこなくても選択できる」ようになったのは大きな一歩だと思います。自分でカラー設定をカスタムできる人が、人に「2011を選んでね」と指示してもDL先から何からを示さなくても良くなった、というのは大変大きい。
2001 vs 2011
もちろんJP2001と2011では色が変わります。一応念のため。
JP2001をターゲットに調整している所にJP2011で分解したCMYKを刷らせたら色変わりますからね。印刷への確認の上で使用するようにしましょう。
色が変わります、の追記
(20180322追記)
実際に刷ってみます。
2001をターゲットにしている印刷会社で、二つのデータを刷ります。
左はJapan Color 2001 Coated。右が2011です。元画像に近いのは左の方。
この肌のグラデーションを2001と2011でCMYK化すると、次のようなグラフになります。
実線が2011。破線が2001です。同じ画像を変換しても、これだけCMYK値が変わりますから、色が変わらないはずがないですね。
ですから、印刷会社の対応状況をきちんと確かめないまま、2011で分解して入稿するとえらいめにあいますよ。お気を付けください。
……まぁ、印刷のブレが大きければ、ブレの範囲内っちゃ範囲内ではあります。
ただ、2011は質の良い(当然!)プロファイルですからどんどん使っていきたいのが我々ユーザ側の希望です。安心して印刷できるところが増えるように、どんどん問い合わせてください。
レンダリングインテントの使い分け
JP2001ではレンダリングインテント知覚・相対でTAC値に差は出ませんでしたが、JP2011ではかなり変わります。(下図・クリックで拡大)
黒点オフを使うことは非常に希ですから無視するとして、JP2011ではPerceptualとRelative ColorimetricでTAC値に12%の差が付きます(一応全色出した上で確認済み)
たった12%ですがこの差はかなり大きく、シャドウのディティール表現に大きな違いが出ます。
▲2枚目はクリックで拡大
▼スマホだと分かりにくいので、少し明るくしたもの
シャドウの表現は知覚的の方がオリジナルに忠実です。相対的は浅くなり、立体感に乏しくなっています。よく言えば明るめ。2001ではこのような差は出ません。
もちろんそれぞれの特徴として、知覚は滑らかで少し暗め(彩度が少し下がる)、相対は色域内の彩度は維持、はそのまま残っていますが、2001とは逆に、写真画像なら2011は「知覚的」をメインに「相対」を補助的に使用する方が平均点取れそうだ、という印象です。
というわけで2011では、これまで以上に意識してレンダリングインテントを使い分ける必要がありそうです。
レンダリング・サンプル
この項のみ、貼り付けた画像はAdobe RGBプロファイルを持っています。
▼Adobe RGBで作成したスペクトルと、sRGBで作成したスペクトル(…う、v)
▼クリックで拡大(※相対は全て黒点オン)
sRGBで作成した画像からの変換は、マゼンタに顕著なバンディングがあり、2001、2011共に一定濃度以下でカラーが飛んでいる箇所がある。Adobe RGB側でも、2001で暗部がグレー化している。
シャドウの色味
2001ではシャドウ部の色味がおかしくなることがよくありました。特に目立つのが紫系のグラデです(下図・クリックで拡大)
グラフの下にある二つのグラデーションは、上が元RGB、下がCMYK変換後のものです。
2001では紫色のグラデーションの暗部が、全てのレンダリングインテントで灰色になっていることが分かります。この色、2001ではどう頑張ってもちゃんと出ません。
2011では、黒点補正オフの相対的を除いてきちんと再現されています。墨と黄の入れ方が2001とは逆転しているのにご注目。シャドウに持って行くのにきちんと上手く墨を使っていることが分かります。そうそうこうあるべきだよねー、というグラフになっています。
これもスマホだと見づらいので、もう少し分かりやすい画像で。
▼元画像
▼2001。下の濃いブルーが灰色になっています。
▼2011。きちんと色が出ています。
もう一つ。
▼元画像(©Africa Studio – stock.adobe.com)
▼2001。もうまったく色出てません。灰色ですね。どうしようもないです。
▼2011。きっちり色出てます。
他のグラデも見てみましょう(以降レンダリングインテントはセット毎に違います)
▲JP2001
▲JP2011
▲JP2001
▲JP2011
▲JP2001
▲JP2011
全体に感じるのは、各インキ%の遷移が非常に滑らかになっていることと、墨版の入れ方がとても納得感あるものになっていることですね。
またCMYの特に0%からの入り、100%への入りのカーブがとても滑らかで、CMYKでの微調整が破綻し辛くやりやすい版になっています。
目標とする変換が違うこともありますが、1%からきっちり出せるCTPの恩恵がフルに生きた、現代に合ったプロファイルだと言えます。