色調補正、トーンカーブ使ってますかー
取っつき辛い、なんでこうなるのか分からない、そういう方を一気に中級クラスに…できるかどうか分からないけど、根元の所から、ちょっと違うアプローチでねっちりやってみますよ。
すっごく長いです。ご注意ください。対象はPhotoshopを使い出してだんだん慣れてきたな…と思ったくらいの方。パネルの出し方とかは知ってる前提です。ガンガン使いこなしてる方には、特に見るものは無いと思います。
簡単にさらさらっと読めるようには…できませんでした。ゆっくり、実際にサンプルを使って操作してみながら読んで頂ければ幸い。
またこのやり方が正しい!と言うつもりもありません…が、はじめたばかりの方が時間をかけても、自分で考えてできるようになるには、実績からも結構有効だと思います。
でもいつもやってるセミナー(仕事)だともっと突っ込んでネチネチやってますのよ(・∀・)ウエーイ
この方法がよさそうだ、と思ったら、社内や仲間内で教える「外に出さない資料」としてなら画像類を使っても構いません。ただし、Blogに掲載する、再配布する、パクる、といった常識から外れる行為には真剣に厳しく対処します。
パート1では、なぜトーンカーブ…?のねっこ、からトーンカーブの見方までをやります。
まえがき
Photoshopには「簡単に一発でできる!」という技はいっぱいあります。
でも、簡単に一発で「思い通りに」できる技、はありません。ありません。ないってば。
作業を簡略化して思い通りにするには、「思い通りになるように(逆算して)組み立てた一発ボタン」を自分で作らないといけないのです。
他人の「一発で簡単」の目標が自分の思ったものと同じとは限りませんよね。
その最たるものがトーンカーブじゃないかな、と思います。
トーンカーブを「設計」するためには、トーンカーブの理屈を知っている必要があります。自分で考えて組み立てられるようになってはじめて、「思い通りに」を簡単にできるようになるんです。
では、ねちねちっとゆっくりやっていきましょうか!
まずは、色調補正の結果の違いから
トーンカーブにさわる前に、馴染みのある「レベル補正」や「明るさ・コントラスト」などを使って画像補正し、結果の違いを見てみましょう。
単純に明るくしてみます。
明るさ・コントラスト 全体にコントラストが高く、色鮮やかになり、ハイライトが飛んだりシャドウが潰れたりしていない。 |
レベル補正 全体にコントラストが低く、色が穏やかになる。ハイライトとシャドウが飛んだり潰れたりしていないが、シャドウが明るく締まらない。 |
露光量 コントラストが強すぎ、ハイライトが白く飛んでいる。色は鮮やかになっている。 |
…と、それぞれかなり違った補正結果になりました。
単に明るくするだけで、なぜこうも違った結果になるのでしょうか?
(機能が違うから、ってのはナシ(`・ω・´))
トーンカーブに置き換えて違いを把握
色調補正機能のいくつかは、トーンカーブにそのまま置き換えることができます。
三つの色調補正機能の結果の違いを、カーブ形状でざっくり確認してみましょう。
リアルタイムにトーンカーブに置き換えて観察できるPSDファイルを用意しましたので、今Photoshopにさわれる方はこれをDLし、一緒に動かしてみてください。
Droplr:Curve_simple.psd(2.15MB)
「Curve_simple.psd」の使い方
赤くマーキングしたレイヤーグループで色調補正機能を挟んであります。
それぞれ選択して、「属性」パネル内のスライダを動かしてください。画像内のトーンカーブが動き、トーンカーブに置き換えるとどんな曲線になるかが分かります。
別の補正を試す時は、他のものをリセットするか、非表示にしてください。
RGBそれぞれのカーブも見ることができます。
では、上の三つの色調補正レイヤーを操作してみましょう。
それぞれ次のような結果になります。今はまだざっくり「違うんだな」ってことが分かればOK。ふにょふにょ動かして楽しんでください。
明るさ・コントラスト
トーンカーブは、両端が固定され、右側の方がぐいっと持ち上げられています。レベル補正と比べてみましょう。全体に、垂直に近づいた急なカーブが作られました。
暗くした時も、右側が大きく動きます。その時は逆に全体の角度は寝た感じになります。
レベル補正
上と同様に両端は固定。左側の方が大きく持ち上げられています。全体に水平に近づいた、寝た部分が多いですね。暗くすると、逆に全体が立ったカーブになります。
露光量
右端が、上辺にくっついたまま左側へぐいっと移動し、「カーブ」ではなく直線になっています。垂直に近い立った角度になっています
それぞれの色調補正機能が、違ったカーブを描くことが分かりました。
ではカーブを読み解いて、なぜこういう結果になるのかを考えてみたい……
のですがその前に、ちょっとだけ前提となる理屈をおさらいしましょう。
なぜカーブなのか?
上限値・下限値とそのあいだ
画像は、「ピクセル」という複数の値を持つ要素が集まってできています。ピクセルは画像情報の最小単位です。
RGB画像の場合、ピクセルの情報:R、G、Bそれぞれが0から255(8bit)の値を持ち、一番暗い状態から一番明るい状態までをこれで表します。
※16bitは8bitと「色の範囲」は変わりません。より細かく区切ることができるので、色数は増えます。
究極的にはPhotoshopの機能とは、ピクセルが持つ値、「入力値」に足し引きして、「出力値」にすることです。
ただし、0から255(8bit)の範囲を超えた、-50や300といった値はとれないので、0から255(0から32768※)の範囲でなんとかしなければなりません。
この「なんとかしている」様子を分かりやすく観察するために、ヒストグラムを見てみましょう。
ヒストグラムで確かめてみよう
ヒストグラムとは、ピクセルをバラバラにして、それぞれの値を0〜255毎にまとめて並べ、見やすいように高さを調整したグラフです(補足説明※1)トーンカーブやレベル補正にも表示されています。
ヒストグラムを見ながら画像の明るさを変えてみます。
明るくしたいので、画像のピクセルの持つ値に、一律に足し算してみましょう。
この画像に「明るさ・コントラスト」調整レイヤーを乗せ、「従来方式を使用」のチェックを入れて「明るさ」スライダを動かしてみます。
「従来方式を使用」にチェックすると、Photoshop CS2までの明るさ・コントラストの動作になり、「直線的に」補正して一切カーブを作りません。
ヒストグラムに注目してください。
画像を構成する全ピクセルに、一律に値を足しているため、ヒストグラムは形を崩すことなく左右に移動します。
ヒストグラムが右端、255に達すると、それ以上の値をとれないため、達したもの全てが255の真っ白になっていきます。
(※ 画像の赤くなっている部分は、RGBが255/255/255になっていることを示します)
ヒストグラムが左に移動し0以下の値にできなくなると、画像の暗かった部分はディティールを失い、どんどん真っ黒に潰れます。青い部分はRGBが0/0/0になっています。
先のPSDファイルを使ってトーンカーブに置き換えると、「従来方式を使用」で明るさを+100した「カーブ」はこうなります。
白が飛んでディティールが無くなり、黒は締まらない。これは私たちが望んでいる「明るくする」補正ではありませんでした。
明るい部分は飛ばさず、暗い部分は潰さずに明るくしたい。
となると、ヒストグラムの(トーンカーブの)両端を削らないように固定し、中間部分でなんとかするしかありません。
RGB値0から255の間で、なんとかする必要があります。
では、同じく明るさ・コントラストを使い、今度は「従来方式を使用」のチェックを外してから、明るさを調整してみましょう。
RGB255/255/255の白飛びは前より減りました。黒潰れはありません。
ヒストグラムは端の変化が少なめで、中間部分が「伸び、縮み」していることが分かります。伸びた(伸長した)部分には櫛の歯状に「す」が入っていきます。縮んだ(圧縮した)部分には「す」は入りませんが、山の幅が潰れていきます。
一番明るくした状態をトーンカーブに置き換えるとこうなります。
端を固定して、中間にかけてより多く値を足したり引いたりするためには、どうしてもこういった「カーブ」を作る必要があります。
だから、トーンカーブ
この変化を生のカーブの形で、整理して見られる色調補正機能が「トーンカーブ」なのです。
「明るさ・コントラスト」などのスライダーで操作する補正では、入力と出力の関係を把握することができません。
「レベル補正」は比較的分かりやすそうですが、中間スライダを動かした時の補正曲線がガンマカーブになる…というような「中でやっていること」が分からないと使いこなすのは難しいでしょう。
どうしても作らざるを得ない「カーブ」を、入出力の関係まで含めてひと目で把握でき、スライダーUIでは作れない曲線を作れる。
実は「トーンカーブ」こそ、初心者が真っ先に覚えるべき機能だと思います。
トーンカーブの見方
入力・出力
トーンカーブは「入力」と「出力」が分かりやすい形で配置されています。
入力側(下)から真っ直ぐ上に上がって、カーブに当たると90度曲がって出力側へ行きます。
カーブに当たる位置で、入力と出力の関係が決まります。
カーブに何もしていないと、X=Y、入力=出力なので何も変わりません。
曲げずに表すとこうなります。
カーブを作るとこうなります。カーブを持ち上げることで、暗めの入力値は倍になって出力され、明るめの入力値はそこそこ明るめの出力値に変換されました。ひとつのカーブに、「かなり明るくなるところ」と「少しあかるくなるところ」が同居していますね。
この「入力」と「出力」の関係をしっかり把握しましょう。
例えばカーブを水平にすると?
カーブを水平にすると、全ての入力値が単一の出力値に変換され、画像はグレー一色になります。
先の「従来方式を使用」チェックオンの「明るさ・コントラスト」ではこうなります。
左の真っ黒の入力値は、グレーになって出力されています。中間より明るい入力値は、トーンカーブの上辺に当たって全て単一の値、真っ白に変換されています。
最初は、目や指で「入力」から「出力」までを追ってみましょう。
「この値が、(真っ直ぐ上に追って)カーブに当たって90度曲がって…(左に行って)この値になる…」というふうに。
さて、先に「端を固定して中間でなんとかするためには、どうしてもカーブができる」と書きました。
そしてカーブをよく見ると、最初の位置、45度の直線から動かしたカーブには、一つの曲線内で違った「角度」がついていることが分かりますね。
45度を基準として、それより垂直に近いか、水平に近いかでいろいろなものが変化します。
カーブの角度
圧縮・伸長は一目で分かる
下図A部分は、元々の入力値の幅よりも引き延ばされています。
B部分は、圧縮されています。
BよりもAの方が角度が急になっていますね。
別の図でもう一度。
緑色、黄土色はかなり引き延ばされました。赤系統部分は逆に圧縮されています。これがヒストグラムにもあらわれていました。
この「引き延ばされるところ」と「圧縮されるところ」は、トーンカーブの角度で分かります。
45度よりも垂直に近く、カーブが立っていると、引き延ばされ、伸長します。
45度よりも水平に近く、カーブが寝ていると圧縮されます。
この角度で、入力値がどう出力値になるのか、濃淡差などが変わるのかが分かります。
Part1のまとめ
- 「レベル補正」や「明るさ・コントラスト」などは、トーンカーブに置き換えると違いがよくわかる
- Photoshopで開いたら「白」と「黒」は決まっている。「0〜255」縛りの中でなんとかするためにカーブが使われる
- 入力(元画像)と出力(補正された画像)、トーンカーブの縦軸・横軸の関係を把握しておく
- カーブの角度から「圧縮」「伸長」が見える
Part2では、角度によって変わるいろいろなもの…を、また周りからネチネチとやります。
※一応下の補足事項も時間に余裕があれば読んでおいてください
補足
補足説明※1
「ピクセルをバラバラにして並べて…」と説明すると楽なのでよく使うのですが、実はこの説明だとヒストグラムを正しく説明できていません。ヒストグラムのグラフを構成する点の横軸位置とピクセルそのものが対応しているのは、グレースケールモードとLabモードでレベル補正やトーンカーブ内に表示されるヒストグラム、各モードでの各チャンネルの単体のヒストグラムと「輝度」のヒストグラムだけです。
ヒストグラム表示方法の「RGB」や、レベル補正/トーンカーブ内に表示されているヒストグラムは、「R/G/Bのうちどれかの数値が○○○のものがこれだけある」ことを示します。つまり個々のピクセルの「明るさの位置」ではありません。
輝度では「輝度換算(RGBそれぞれに重み付けした加重平均を、ガンマ値/ドットゲイン値で補正した数値)したピクセルがここにこれだけある」ことを、またグレーでは「グレー値が○○○のピクセルがここにこれだけある」ことを示し、ピクセル個体の位置を示します。
これが「違和感」に繋がることがあります。トーンカーブで「ターゲット調整ツール」を使い画像をポイントすると、カーブ上にポイントした画像の「明るさ」を表す○が現れます。これは、実はポイントした部分の「輝度」を表しています。
ターゲット調整ツールは、RGB合成チャンネル上では「輝度」を表し、RGB各チャンネルではRGBそれぞれの値を示します。つまりRGB合成チャンネルでは「感覚的なあかるさ」、各チャンネルでは「厳密なRGBの数値」を示します。合成チャンネル上でショートカットキーを使い、各チャンネルに直接コントロールポイントを打つことができますが、この際「思っていた場所と違う…?」と感じたら、このことを思い出してみてください。